日本財団 図書館


 

?C背泳ぎの科学

―スタート、ターン、フィニッシュについて―
(財)日本水泳連盟医・科学委員
京都工芸繊維大学助教授 野村照夫

1. はじめに

背泳ぎは、仰向きで水面を泳がなければならない。また、スタートやターンの際、壁をけった後15m地点まで潜行が認められている。そして、ターンやゴール・タッチでは、壁に身体の一部が触れればよいが、ターンの一連の動作として、一時的に伏臥姿勢になることは、許されている。これらの競技規則1)を理解し、その範囲内で競技記録を短縮するために、ストローク局面のみならず、スタート、ターンおよびフィニッシュ局面の時間短縮を考えることは、程度の差こそあれ、重要な要素であると考えられる。しかし、競技記録に対するスタート、ターンおよびフィニッシュ局面の目標値の設定は、従来コーチや選手の経験に頼ってきた。また、どの程度スタート、ターンおよびフィニッシュが効果をもたらしているのかも詳細に検討されていない。そこで、競技記録からスタート、ターンおよびフィニッシュ局面の目標値を設定するための推定式を導出することとその効果を検討することを目的とした。

2. 方法

2.1 対象
競技記録からスタート、ターン、フィニッシュの目標値を求める推定式を得るために、‘94から‘96年の日本選手権水泳競技大会の100m背泳ぎ予選、B決勝および決勝に参加した男子206名、女子204名のレース4)、5)を用いた。競技記録の分布は、図1に示すとおりであった。また、推定式を‘93年のパンパシフィック大会の100m背泳ぎ予選、B決勝および決勝に参加した男子35名、女子37名のレース3、にあてはめ、妥当性も検討した。

027-1.gif

図1 競技記録の分布

2.2レース分析法
レースにおける撮影機材の設定および通過時間等のデータの収集方法は、日本水泳連盟医・科学委員会の方法3)、4)、5)に基づき行った。
なお、スタート、ターン、フィニッシュ局面は、次のように定義した;
スタート:スタート合図より15mを泳者の頭が通過するまでの区間。
ターン:45mを泳者の頭が通過してから60mを泳者の頭が通過するまでの区間。
フィニッシュ:95mを泳者の頭が通過してからゴール壁に身体の一部が触れるまでの区間。
また、各局面効果は、次のように定義した;
スタート効果:15mから25m区間のストローク局面の泳速度でスタート局面を泳ぐ場合の時間とスタート時間の差。
ターンの効果:ターン局面をターン壁に身体の一部が触れるまでのターン・イン(45m〜50m区間)とターン壁に触れた後のターン・アウト(50〜60m区間)に分け、ターン・イン効果とターン・アウト効果としてとらえた。ターン・イン効果:25m〜45m区間のストローク局面の泳速度でターン・イン局面を泳ぐ場合の時間とターン・イ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION